✈ ビジネスマナー研修で、受講生からいちばん聞かれる質問とは? ✈
接遇マナー研修・電話応対研修・クレーム応対研修などの
さまざまなビジネスマナー研修を行うなかで、
共通して受講生の方からかならずいただく質問があります。
それは、敬語に関すること。
「ふだんこんな敬語をよく使うんですけど、合っていますか?」
「職場でまわりが使っているから自分もこの敬語表現を使っているけど、
なんだか違和感を覚えています・・・。」というような質問です。
「適切な言葉遣いや敬語の正解がわからない」という不安を抱えたまま、
お仕事をなさっている方は意外と多いのではないでしょうか。
実は、マナー講師である私が ビジネスマナーを学びなおそう!と
決めたきっかけも、【敬語】でした。
✈ 外資系航空会社のCAには、高い日本語力が必要 !? ✈
日本ではほとんどの場合、一般的な企業の新入社員研修に
ビジネスマナー研修が組み込まれています。
でも、大学を卒業してから、外資系の航空会社2社で働いてきた私には、
そのような研修を受ける機会がありませんでした。
また、まわりが外国人ばかりの職場では、敬語の正解を
上司や先輩に聞くこともできません(^^;
自分なりの解釈で判断しながら、合っているのかどうかが曖昧な敬語で
接客をしていました。
外資系航空会社の客室乗務員だったら、求められるのはむしろ英語力じゃないの?と
思われるかもしれませんが、実は、日本語力がとにかく必須です!
海外と日本をつなぐ便では、全乗客の8割以上が日本人のお客様、ということもあります。
それに対して、だいたい日本人乗務員は2~3名乗務(少ないときには1名だけ)というパターン。
数が少ない分、その会社の【日本人代表】として、お客様の印象に残りやすくなります。
そのため、外資系の客室乗務員には、日本語力やおもてなしの心、察する力など
【日本人特有のスキル】が、大きく求められます。
私は長年、そんな【ひとりの日本人としての責任】の大きさを感じながらも、
自己流の敬語で突き進んでしまっていたのですが、
ファーストクラスを担当するようになったことをきっかけに、
きちんとした正しい敬語を身につけないと!と強く思うようになりました。
ファーストクラスの接客では、ひとりひとりのお客様に、
より長く、より深く、接することになるからです。
✈ 機内での自己流敬語 ✈
さて、そんな私が機内で使っていた自己流敬語。
もちろん間違いがたくさんありました。
たとえば、夜中出発の便で、
『お客様がお休みになっている場合、お食事のために起こすべきかどうか』を
事前に確認しておくとき、
私はいつもこんなふうにお声がけをしていました。
「離陸後、軽食のサービスがございますが、
お召し上がりになられますか、それともお休みになられますか。」
みなさんは、間違いに気づかれますか。
とにかく、「丁寧にお話ししなきゃ~」という気持ちから、使ってしまっていた表現です。
ここでの間違いは何かというと・・・、
【二重敬語】です!
✈ 間違い敬語の定番! 二重敬語とは ✈
【二重敬語】とは、その字の通り、敬語が二重に使われてしまっていること。
本来、ひとつの語に対して、同じ種類の敬語はひとつしか使うことができません。
それをふたつ重ねて使ってしまう間違いが、【二重敬語】です。
「食べる」という動詞で考えてみましょう。
動詞の尊敬語の作り方は3種類。基本ルールに従うと、
・「お(ご)~になる」の形にあてはめる ➡ 「お食べになる」
・「~れる・~られる」の形にあてはめる ➡ 「食べられる」
・元の動詞からまったく形が変わる特別型 ➡ 「召し上がる」
「お食べになる」「食べられる」「召し上がる」という3つの尊敬語ができます。
この3つは、「食べる」の尊敬語として、語法上成り立っています。 ※
特に①と②の作り方は、とてもシンプルですよね!
せっかくシンプルなのに、この3つを混ぜたり、組み合わせたり、
とわざわざ余計なことをしてしまうと・・・
①「お食べになる」と ②「~られる」を混ぜて、「お食べになられる」
③「召し上がる」と ②「~られる」を混ぜて、「召し上がられる」
「お食べになられる」「召し上がられる」のような、間違い【二重敬語】になってしまいます。
補足ですが、③「召し上がる」と①「お~になる」を混ぜた二重敬語「お召し上がりになる」は、
表現が定着してしまっているため、特別に許容されています。
(飲食店や、食品パッケージなどであまりに広く普及したからだと考えられます)
※「食べる」は直接的な表現であり、目上の人に使うのは失礼にあたることもあります。
語法上は誤りでなくとも、「お食べになる」や「食べられる」は避けるほうがいい表現です。
✈ 機内でのお客様へのお声がけ 適切な表現は? ✈
ここで、先ほどの『機内でのお客様へのお声がけ』をもう1度見てみましょう。
「離陸後、軽食のサービスがございますが、
お召し上がりになられますか、それともお休みになられますか」
「お召し上がりになられます」と「お休みになられます」が二重敬語になってしまっています・・・。
「食べる」の尊敬語
「お召し上がりになられます」× ➡ 「召し上がります」「お召し上がりになります」〇
「寝る」の尊敬語
「お休みになられます」× ➡ 「お休みになります」〇
よって、適切な表現はこのようになります!
「離陸後、軽食のサービスがございますが、
召し上がりますか(お召し上がりになりますか)、それともお休みになりますか」
✈ 適切な言葉遣いと正しい敬語は、『自信を持って仕事をする』ための心強い味方! ✈
先ほどの例では、二重敬語は間違い!と言っておきながら、
「お召し上がりになる」のように、許容されているものもあるなんて、ややこしいですね。
敬語は、あまりにも奥が深いので、
100%正しく敬語を使いこなす!ということは不可能に近いことかもしれません。
さらに、言葉は時代とともに変わるものです。
「お召し上がりになる」の例のように、
もともと間違いとされていた表現が、あまりに浸透し広くみんなが使うようになると、
だんだんと許容され、正しい言葉へと変化していくこともあります。
そのため、正しい敬語にこだわりすぎる必要はないと思いますが、
やはり仕事をするうえでは、適切な敬語をスムーズに使うことは大切にしたいですよね。
それが、自分の印象を良くして、相手に信頼感を持ってもらうことにもつながります。
私も、まだまだ敬語の使い方に迷ってしまうこともありますが、
日々、適切な言葉遣い・正しい敬語を追求することを楽しんでいます。
「接客で、決まり文句以外のことを話すときには、言い方に迷ってしまう。」
「ビジネスメールを書くのが苦手・・・。敬語や言葉を選ぶのに時間がかかってしまう。」
というようなお悩みをお持ちの方は、
ぜひ、言葉遣いや敬語に、あらためて意識を向けてみてはいかがでしょうか。
みなさまのスムーズなビジネスライフとさらなるご活躍を願って、
【適切な言葉遣い】と【正しい敬語】を身につけるためのお手伝いをしてまいります。